車イスで街にくり出そう_札幌

車イス使用者が札幌市を中心に地域活動するのに有用な情報を提供します。

21 「車イスお出かけナビ_札幌」の目標

       目 次  

いつでもどこでも最新の情報にアクセスできるプラットフォーム

迷子になりにくく、目あての情報を見つけやすい構造
 (1)3層構造
 (2)フォーマットの統一

多様な身体能力や属性の人々に伝わる情報
 (1) 幅広い能力障害の人々に伝わる情報
 (2) 日本語を読めない人々に伝わる情報
 (3) 土地勘のない人々を誘導する情報

4 施設の分布密度に応じた柔軟な情報提供

5 外出の動機づけ

 

0 「車イスお出かけナビ_札幌」の概要  

 「車イスお出かけナビ_札幌(以下「ナビ」と記す)」の概要は20「ナビ」の紹介にあります。ここではシステム構築の目標を紹介します。


1 いつでもどこでも最新情報にアクセスできるプラットフォーム

 表題に掲げた「いつでも」、「どこでも」と「最新の情報」への対応法は情報をウエブ上で構築すること達成できます。誰でもURLさえ入手したらウエブ上の情報にいつでも、どこからでもアクセスでき、そのURLも「札幌、車イス、外出」などの検索ワードで容易に見つけられます。
 いつでもとは情報利用者が思い立つときであり、紙媒体の資料なら取り寄せるには通常相当の時間がかかり、電話で相談するには相手の都合があります。自分の都合で情報にアクセスできるとしたら、いつでも応えてくれるネットシステムこそが便利です。ただし、それにはウエブ上の情報にアクセスする媒体が必要ですが、最近は多くの人が身につけるスマートフォンタブレットで簡単な操作で使えることが必要です。
 どこでもとは情報が必要になる場所どこでもであり、多くは訪問を計画するときや、出先で移動したり休憩したりするときでにいる場所です。ウエブ上にある情報なら自宅や勤務先などであればPCが使え、出先であればモバイルメディアでアクセスできます。
 最新の情報とは2000年代に入り市街地ではバリアフリー 化が急激に進むのに応じ、ウエブ上の情報はデータを確認し次第にいつでも更新できます。札幌市内でも住宅地や郊外は変化が少ないものの、バリアフリー施設の分布密度がもともと薄いので変化による影響が大きいので情報の加除修正は市街にもましまて重要です。障害者の活動環境にかかる情報提供にあたっては、そんな問題意識を理解した上で鮮度を保つ情報更新しなければ、情報をウエブ上で展開する意味が削がれます。

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2 迷子になりにくく目あての情報を見つけやすい構造  

(1) 情報システムの3層構造
 提供する情報の間口が広がり量が増えると利用者が満足できる情報を見つけるのに手こずり、データの森で迷子になることがあります。「ナビ」では障害者用トイレのある施設が札幌市内だけでも千か所をゆうに越える上、サービスの種別が多岐(遊楽、飲食、買い物、公園その他)にわたり、また施設や場所が市内各所に分散するので、個別情報のページに至る手順の単純化が必要と考え3層の階層構造にしました。第一階層では外出目的の活動、楽しむ、食べるや買うほかと検索方法(地図や一覧表)とを選びます。第二階層では地図検索ならサービスの種別を異なる色のマーカーにて示すことで、施設の種別と場所とを一度に見分けられるように提示します。一覧表検索なら区別に施設や場所を提示します。第三階層で施設や場所の個別情報や活動環境の詳細が見られるので、目的や身体能力に合わなければ第二階層と往復ればこと足り迷子の心配がありません。
 第1階層(総目次)  活動の種類、検索方法(一覧表 or 地図)を選ぶ画面
 第2階層(中目次)  活動環境を知りたい施設や場所を選ぶ画面
 第3階層(ナビ個票) 施設の場所、具体の活動環境や魅力を紹介する画面
(2)フォーマットの統一
 提供する情報に盛り込む細目や表現は施設により異なりますが、ここでは基本様式を統一するとともに、写真やグーグルマップを主体に文章を補足とし、直感に訴える情報化を目指します。概要は次の通りです。
  基本情報(住所、所在場所、駐車場の有無、サービス提供の日や時間など)
     提供情報のフォーマットを統一し簡潔に表現
  位置情報(グーグルマップ)
     拡大縮小できるグーグルマップにより広域から地先まで誘導できる
     土地勘のない人も直感で目的の施設や場所が見つけやすい
     施設や場所のサービスの種別をマーカーの色により区別して表現
     サイト利用者の現在地と施設や場所の位置とを地図上に一緒に表示
  アクセス環境(駐車場、施設外観、出入口まわりなど)
     写真で表現:幅広い身体能力の人々が活動環境を見て把握できる
     写真なら調査者が気づかない障壁や使い勝手も推測できる
  利用環境(観客席、飲食フロア、園内地図など)
     観客席:周囲の観客席との関係やイベントの見え方がわかる写真
     飲食フロア:テーブルまわりや移動空間の広さの見える写真
     園内地図:屋外施設は移動経路や順路の縦断勾配を図に表現
  トイレ環境(便房内部、便器周り)
     便房内部:便房の広さ、設備配置、接近空間の分かる写真
     便器周り:便器と手すりの位置関係、便器周りの分かる写真

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3 多様な身体能力や属性の人々に伝わる情報  

(1) サービスを提供する対象者群と限界
 車イスを使う人々は「車イス使用者」と一括りにされますが、それらの人々の間で身体能力に幅があります。住宅内なら歩けるが外出時だけ車イスを使う高齢者から、移動に車イスが欠かせない人までいます。前者なら車イスでトイレに近づけ洋式便器に手すりがあれば用を足せますが、後者の人々なら障害者用トイレとアクセス環境が要ります。多くの情報サイトはそれらの人々を一緒くたにするため、ときに不適合による事故が起こるせいか「バリアフリーの詳細はお店にお問い合せください」などと注記する例がみられます。「ナビ」では手動車イスを常時使う人を情報提供の対象者群に据え、実地調査で使えることを確認したトイレのある施設や場所を紹介します。つまり、室内なら少し歩ける人々にはもれのある情報である一方、電動車イス使用者など重症者には鵜呑みにできない内容です。
(2) 幅広い身体能力の人々が使えるか判断できる情報
 車イスでの使用環境の紹介に便房やアクセス経路の建築図面を付ければある意味で正確ですが、図面を読めない一般人にはむしろ分かりづらくなります。便房、便器や付帯設備ほかの配置等を言葉で紹介する例もみますが、説明の正確さを期すと表現がくどくなり読む気が失せます。「ナビ」では便房内部と便器周りとをそれぞれ一枚の写真で示し(第3階層参照)、最小限の言葉で補足しました。便房内部の写真なら一目で便器、手洗い台、おむつ交換台やオストメイトの有無や配置が分かります。また便器との大きさの比較で便房内の接近や介助のための空間の広さが推測できます。さらに、標準的な障害者用トイレより狭い便房は内寸を㎝単位で表記し、幅広い身体能力の人々が使えるか否かをそれぞれに判断する材料とします。
(3) 日本語を読めない人々に伝わる情報
 「ナビ」は日本語を読めない人々へのサービスも射程に考えます。この情報に基づき活動する折、事前に施設や場所が使える活動環境か否かを判断できることを確認し、目星をつけた施設に現地でたどり着くことが必要です。施設選びでは便房内や便器まわりの写真があるので、日本語を読めなくても設備の内容や配置、広さがわかります。現地での移動については個別情報のページにグーグルマップを埋め込みマーカーで場所を示すので、日本語が読めなくとも施設や場所への道順が推測できます。もし道に迷ったとしてもマーカー付きの地図を示せば、言葉が通じなくても助けてくれる人が見つけられるでしょう。なお、便房内を1枚の写真に収めるのに広角レンズ(焦点距離16㎜)を使用するので、撮影位置から遠い便器が相対的に小さく、手前の接近空間が広く映ります。つまり、内部空間の狭い便房もそこそこ広い印象を与えるので、内寸が180x180㎝より狭ければ内寸を数値で記します。写真とアラビア数字の寸法とがあれば、障害者用トイレを使いつける人なら日本語が読めなくても判断できると考えました。
(4) 土地勘のない人々を誘導する情報
 札幌市在住者でも市内に土地勘のない場所が方々にあり、また地下街や大きなビルから出たときなどに方向を失うことがあります。札幌市を訪れる外来者なら土地に不案内な場所だらけで、障害者用トイレの情報を持っていてもその場所にたどり着くのに難儀しかねません。本サイトはPC、スマートフォンタブレットの画面にグーグルマップを展開し、メディアのある場所とトイレのある施設とをマーカーで示せます(利用者が位置情報の取得を許せば)。地図は自分の位置を中心に周辺を表示するので、目的地への道順が見つけやすく誘導できます。

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4 施設の分布密度に応じた柔軟な情報提供 </a

 バリアフリー新法は人の多く集まる場所や大規模者施設の活動環境改善を集中的に進めることを旨とし、札幌ではそんな区域や施設で成果が着実に現れます。しかし、市街から離れると障害者用トイレの分布密度が薄い区域が残り、居住区域などではちょっとした活動でも制約になります。また、サービス分類ごとに整備状況を見ると、法の適用を受ける床面積の広いスーパーマーケットや公的な施設のバリアフリー化が進む一方、適用条件に満たない飲食店や専門店は市街地でもバリアフリー化の進捗が遅れます。外食などはお腹を満たす以外に懇親などの目的を込めることがあり、外出時間が長くなるので食事場所に排泄できるトイレが必要ですがバリアフリー化が遅れます。
 「ナビ」はサービスの密度の薄い区域では柔軟な情報提供を旨とし、バリアフリーの標準仕様から少し外れる施設や場所の情報も加えました。札幌市の中心市街、JRや地下鉄の主要駅から離れる場所における車イスでの活動の可能性を広げるためです。また、中心市街であっても公共施設なら18時頃、商業施設も22時頃にはサービスを停止し、夜間の障害者用トイレの密度が希薄になります。そこで「ナビ」は使える障害者用トイレの分布密度が薄い区域、時間帯やサービスを補うべく、標準的な仕様に満たなくとも車イスで使えそうな施設の情報提供が必要と考えました。ただし、そんな施設や場所については標準的な仕様に満たない条件、たとえば便房の内寸やアクセス動線などの留意点を注意書きすることにより、利用者が利用の可否を判断できるようにしました。

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5 外出の動機づけ  

 バリアフリー新法に基づく環境整備は能力障害のある人々が個別の施設や場所を使える、つまり活動環境を可能態に整えることを求めます。しかし、可能態となった施設や場所が「それらを必要とする人々」が普通に使う現実態になっているかといえば、個人的には疑問を感じるところです。その理由はいくつも考えられますが、このブログで扱う情報の不備が考えられます。障害者用トイレのある施設の存在や使用環境をウエブ上で紹介する「ナビ」がそれでした。しかし、障害者用トイレの整備は従来の活動環境にあるマイナスを縮減するもので、車イス使用者をして外出に踏み出させる力があるか疑問でした。そんな状況を変えるには可能態となった施設や場所の活動の安心に加え、魅力や楽しさを伝えることが必要と考えました。そこで、2020年に始める「30 車イスでくり出そう_札幌」(「くり出そう」)では施設や場所の主要動線をたどり、車イス上から見える景色を連続で紹介します。

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情報提供:NPO 環境福祉支援サービス プラスアルファ
企画・調査・製作:環境複合研究所