車イスで街にくり出そう_札幌

車イス使用者が札幌市を中心に地域活動するのに有用な情報を提供します。

35e 北野たかくら緑地

      目   次

1 公園の概況

2 公園の特徴

3 サービス施設

4 車イスでの歩き方
 ー 6月新緑 2021年
 ー 10月紅葉 2019年, 2021年

5 蛇足


1 公園の概況
所在地(グーグルマップ) 
 札幌市清田区北野6条4丁目10
《 場所の特徴 》
 「清田ふるさと遺産」に指定された公園で、高倉佐輔氏が大正13年に牧場として開拓した区域の一部約4ヘクタールを緑地にしたものです。住宅地のただ中にありながら、密度の濃い林に囲まれた静かな環境は周囲と別世界です。緑地の特徴である森はフェンスで二つに区切られ、南側は平坦な広場を含む林に踏み固めた土の園路がある利用森で、北側は密度の濃い森が地表近くまで覆い木道が走る保護林です。

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育てる森の土の園路           見守る森の木道  

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育てる森の広場

《 活動障壁 》
 緑地の中を旧川らしい低地が走り、そちらに斜面が落ち込みます(別図参照)。低地をまたぐ園路が2ルートあり、南側は橋がかけられ、北側は木道の斜路で底部まで下ります。南北の森はフェンスで仕切られる一方、接続する園路に自転車の侵入防止のブロックがおかれ、車イスはかなり無理をしなければ通過できません。しかし、今回はこのブロックを越えて南北を通しで散策しましたが、障壁が色々あったのでルートごとに紹介します。
ー 南ルート:集いの広場〜ふれあい広場〜育てる森
 市道から橋までの園路はブロックが張られ、低部の橋に向け縦断勾配が5%の下りです。橋の前後で園路との境に5㎝超の段差がありました。橋から先は森の中を含め土の園路で、縦断勾配がきつい箇所もあります(別図)。橋を越えると森との境にコンクリート擬木が横たわり段差が10㎝ほどありました。擬木箇所を越えるのに3度の訪問で毎回てこずりました。
ー 北ルート:都市公園〜春の森〜見守る森
 北側の森は保護林で、車イス使用者を含め誰もが木道を通ります。森内への侵入防止のためと思いますが、車イスでの散策が可能になりました。木道は森の中にループ状にあり、保護林の外に2本の分岐でつながります。ループ状の木道には一部未施工区間、階段や長い縦断勾配10%の区間があり、散策ルートの選択に注意が要ります。都市公園側から森に入り、比較的勾配の緩い木道区間を散策するのが安全です。
ー 木道の隣接区画との接合部
 南ルートと木道との接合部に自転車の通行禁止の標識とともにブロックがあります。車イスでの通過はむりそうですが今年の調査で無理やり通り、南北のルートを一度にまわりました。ただ、その先の木道障壁が複数あるので車イスでの単独行は勧めません。
 都市公園側の接合部に車イスが通れる回転ゲートがあります。また、木道の所々に利用者が交差するための広い箇所があります。回転ゲートから木道の未施工区間まで縦断勾配が5%以下なので、こちらは車イスでの使用に配慮する設計と思われます。

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遠路に横たわる擬木             自転車止ゲート
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木道の未施工区間            車イス対応回転ゲート

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2     公園の特徴
《 公園の概況 》
 住宅街の一区画に深い森が残され、都市公園的な広場と自然豊かな森とで構成する緑地です。南の森は林と広場との配分が絶妙で、広場から目を凝らせば木々の間に住宅が見え隠れしますが、まわりはすべて木、木、木です。耳をすませば車イスが踏みしだく枯れ葉の音や遠くの犬の声でした。運が良ければ鳥や虫の声が響くとか。また、葉ずれのささやきとともにゆるやかな風が頬をなでました。北野森は木道が密度の濃い森を走り、車イスでは容易に近づけない場所に踏み込めます。

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《 公園の植物他 》
 ウエブ上で動植物の情報を探したところいずれもコナラの森とあり、野鳥や昆虫が生息する旨の記述があります。また、車イスで近づけませんでしたが、池と湿地があるようなので多様な動植物が生息するものと思われます。
《 公園の利用者 》
 この緑地を3度訪れましたが、見かけた人は毎回一人だけでした。うち二人は森を急ぎ足で横切る人で、他の一人は犬の散歩でした。活動障壁があるので車イスでの利用があるか疑問です。駐車場がなく公共交通機関の駅から遠いので、大部分が近隣住民の利用かと思います。ただ、健常者なら市道から1分、車イス使用者も数分で快適な異空間にひたれる公園なので、情報の共有がすすめば利用者が増えそうです。

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3     サービス施設
(1) 公衆便所
 公園の南東に障害者用のブースを備えた公衆トイレがあります。
(2) 駐車場:なし

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4     車イスでの歩き方《 アクセス 》
 地下鉄東西線南郷18丁目駅」からバスで「北野7条4丁目」下車
《集いの広場〜育てる森 》
 日頃の人為空間を離れて自然空間に触れ、心静かな時間を過ごしたい向きにはこ南の森のふれあい広場がおすすめです。集いの広場側から入ると大小3ヶ所の段差を越えねばならず、入るのに成功したとしても戻る際にも逆向きにこえねばなりません。段差の前後が坂になっており、手がかりの位置が変わるので、戻り道も安全に通過できるとは限りません。同行者を伴うことを勧めます。

都市公園〜保護森 》
 樹木とその下草の活き活きとした息吹に触れたい向きには北の森がおすすめです。都市公園側から森に入るなら、縦断勾配が5%以下の木道を通り車イスで森を安心に楽しめます。屋外での介助に慣れた同行者がいれば、木道の未施工区間や急勾配区間を通りより深く森を楽しめます。ただ、木道を散策する人が少ない時期であれば、安全なルートと区間で楽しむことを勧めます。
《 集いの広場〜育てる森〜保護森〜都市公園緑地全体を散策する動画
 南の森で静かなときを過ごしたあと、北の保護林に踏み込むのも一興です。車イス使用者は日常の大部分を人工環境で暮らしており、自然の豊かな森に踏みこめるこの緑地は心身の健康に良い影響を及ぼします。また、表情の大きく異なる森を一度に楽しめることは、他では得られない貴重な楽しみです。

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5     蛇足
 本緑地が一連の紹介記事で活動障壁の記述がトップクラスになりそうですが、この緑地の魅力を多くの人に知ってもらいたい気持ちの現れです。私が訪れた200件を越える公園などで、この緑地が最も心の静まると感じました。そんな魅力ある空間が必要になったらほんの数分で安全地帯に戻れる場所にあるのですから、体調を心配する人にも安心に訪れられます。しかも、ほんの少しだけ維持管理の手を入れるだけで、他者の助けなしにここを利用できる人が増えるのです。
 この緑地の魅力は普遍的なものであり、車イス使用者だけに特別でありません。そこで、車イス使用者が誰かの助けを借りて訪れるとしても、同行者の肉体的な負担が小さくいだけでなく、森を一緒に楽しめることが心を軽くします。
 

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情報提供:NPO 環境福祉支援サービス プラスアルファ
企画・調査・制作:環境複合研究所