車イスで街にくり出そう_札幌

車イス使用者が札幌市を中心に地域活動するのに有用な情報を提供します。

42 車イスから浴槽の使用

            目   次

 

1 車イス生活になったのちの入浴

2 いろいろな浴槽の使用
(1) ブログ制作者の自宅の浴室
(2) UD仕様の賃貸マンションの浴室
(3) ブログ制作者が泊まったホテルの浴室
 ① 浴槽の端部に50cmほどの移乗台のある浴槽
 ② 浴槽の端部に20cmほどの移乗台のある浴槽
 ③ 移乗台がなく浴槽の外に仮設の移乗台のある浴槽
 ④ 浴槽の端部に移乗台がなくバスボードの用意のある浴槽
 ⑤ 浴槽の端部に移乗台がない浴槽

 

1 車イス生活になったのちの入浴
 私は人生の半ばで中途障害者となり、日常を車イスで過ごすことになりました。そんな日常生活で様変わりした困難の一つが入浴でした。在宅に戻った当初は生活の場とする2階に半畳のシャワーブースを設置し、シャワーチェアーに掛けて汗と垢を流しました。10年ほどして生活の基盤を1階に移したときに浴槽を使えるように改造し、68歳のいまも独りで入浴できます。車イス使用者の入浴の仕方は、残された機能と活動環境との組み合わせにより異なります。ここでは私の自宅での入浴、ある賃貸マンションでの入浴やいくつかのホテルでの入浴の方法について映像で紹介します。

2 いろいろな浴槽の使用
(1) ブログ制作者の自宅の浴室
 自宅の浴室は国土交通省平成24年に発表した「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計基準」の「家族浴室の例(下図ご参照)」の考え方に従います。つまり、浴室の出入り口に段差がなく、扉の開口部が広く、浴槽の端部に移乗台があり、洗い場で車イスの向きが変えられる仕様が求められます。幅広い身体能力の高齢者や障害者の多くが使いやすいように配慮される仕様である一方、一般住宅でこれだけの床面積を浴室に使えるかといえば疑問が残ります。加えて、入浴に関わる一連の仕様を浴室と同水準にするには、脱衣所や動線にも大きな面積が必要です。同図で寸法が明確に示されているのが車イスの回転半径の150cmでタイルが7.5枚分なので、これがポンチ絵としても実寸にすると内寸で180x330cmほどと推察され、家庭用のユニットバスの内寸が120x160cm、160x160cmや160x200cmであるのと比べると面積比で3.7倍、2.3倍や1.9倍です。
 自宅の改造では元の浴室の隣にあった納戸を潰して、浴室を広げ洗面所と脱衣所を設けることで無理を通すことができました。私の機能障害と残された機能については別のブログに譲りますが、私が入浴する手順の動画を紹介します。


(2) UD仕様のある賃貸マンションの浴室
 上の設計例は身体能力の幅広い人々に適合する一方で、普及性にいささか疑問があります。我が国では戸建て住宅からマンション、ホテルまで多くがユニットバスを採用され、その性能や意匠が多彩であるのに対し、上の例を採用するには在来工法で個別の設計になります。そして在来工法はユニットバスに比べ床面積が広く要し、費用がかさむだけでなく、意匠や寸法から居住者に「特別感」を覚えさせます。そんな浴室を備える住宅を賃貸で貸すとなると、居住希望者が内見するとき無駄の多い間取りと感じ、家賃を割高と感じます。ここで紹介する部屋はあくまでも一般向けの賃貸住宅として企画した部屋にユニットバスを採用した浴室の使用例の映像です。
 このユニットバスの特徴は洗い場のものおき台をベンチカウンターにし、一般の居住者はシャンプー等を置く台に使い、移動制約のある居住者は浴槽と出入りする際の移乗台に使います。ユニットバスの内寸は160x160cmで、T社が製造・販売する普及版シリーズの一つなので価格がやや高めも、標準的な建築の浴室の寸法に収まり、かつ居住者に「特別感」を与えないのが利点です。この住宅への入居者からの聞き取りによれば、札幌市内の賃貸住宅の浴室は狭い物件が多く、1616規格のユニットバスに満足している由でした。つまり、これが車イス使用者、片麻痺者や歩行の不安定化する高齢者が独りで安心に浴槽に浸かれる仕様であることに気づ数に満足して暮らしています。


(3) ブログ制作者が泊まったホテルの浴室
 私が車イス生活になって以降、泊りがけで出かけるときは障害者用客室を使うようにしています。障害者用客室でも実に多様な仕様の設計が見られ、いろんな浴室やトイレに遭遇しました。そんな中には私の身体能力では浴槽を到底使えない浴室もありましたが、水まわりにかかる仕様が年々収斂する傾向にあると感じます。動画撮影機材を入手したのが最近なのでデータ不足の感は否めませんが、去年宿泊したホテルで撮影した動画を紹介します。
 これまで使ったことのある例は大まかに次のように分類できます。
① 浴槽の端部に幅50cmほどの移乗台のある浴槽
 車イスからの移乗する台が広くて、足を浴槽に移すのに身体の安定が保ちやすく安心です。また、身体の前に足を伸ばした姿勢で移乗台と浴槽とを出入りするので、腕や上体にかかる負担が少なくて済みます。浴室の壁や床はFRBのようですが、在来工法の比率が大きそうでした。また、一般的なユニットバスとは異なる「特別感」のある仕様なので、一般客には違和感を覚えるでしょう。このホテルチェーンのツインの障害者用客室は浴室とトイレ・洗面所とが別で、客室全体の床面積が一般のツインルームよりかなり大きいのですが、一般向けツインルームと同じ料金で提供しているようです。私にとり安心に使える仕様ですが、その使用の映像を紹介します。

② 浴槽の端部に20cmほどの移乗台のある浴槽
 浴室と居室との間に段差をなくし、浴槽の端部に移乗台を設けてあります。ただ、移乗台が狭い上に水平手すりが腰かけられる幅を狭めるので、足を浴槽に移す際に身体のバランスの維持に注意が必要です。私は浴槽端部の壁にある鉛直手すりと、脇の壁にある水平手すりを持ち替えながら上体を立てたまま足を移しました。私は浴槽端部にある水平手すりを使わないので邪魔に感じますが、いろいろな機能障害の人への対応上必要なのかもしれません。一般的なユニットバスの印象があり「特別感」の少ない仕様なので、一般客にも販売しやすい客室なのかもしれません。その使用の映像を紹介します。

③ 浴槽の端部に移乗台がなく脇に外付けの移乗台のある浴槽
 今秋に泊まる機会に恵まれれば動画を撮影し紹介します。


④ 浴槽の端部に移乗台がなくバスボードの用意のある浴槽
 なかなか巡りあえませんが、機会があれば紹介します。


⑤ 浴槽の端部に移乗台がない浴槽
 最近は外出機会が少ないのもありますが、遭遇したら情報蒐集します。

目次に戻る

前ページに戻る
情報提供:NPO 環境福祉支援サービス プラスアルファ
企画・調査・製作:環境複合研究所