車イスで街にくり出そう_札幌

車イス使用者が札幌市を中心に地域活動するのに有用な情報を提供します。

11 私の属性、機能障害と活動状況

      目   次

1 個人の属性
  (1) 個人の属性
  (2) 私は車イス使用者の代表ではありません
  (3) 私は医学、福祉、建築、福祉器具の専門知識がありません

2 障害の部位と機能障害
  (1) 第一腰椎の損傷に伴う下肢の著しい麻痺と移動法
  (2) 排尿障害、尿意の喪失と自己導尿
  (3) 下半身の感覚麻痺と褥瘡
  (4) 車イスユーチューバー

3 残された機能とできること、できないこと
  (1) 立位の移動を使う場面
  (2) 自家用車改造の運転
  (3) 水分摂取と排尿管理
  (4) 加齢による身体能力の衰え

     個人の属性

(1) 個人の属性
 私は1952年生まれ、性別は男です。大学教育は土木工学を学び、現在の職業は自称ユニバーサルデザインの研究者、10数年前まで公務員でした。25年ほど前の42歳のときに事故で脊髄を損傷し、車イス使用者になった中途障害者です。当時、職場の理解がえられ受傷後も55歳まで勤務を続けられました。退職後はユニバーサル・デザインの解釈や実践展開を中心に研究、それを基に技術提供や講師などをしています。また、人生の中途で車イス使用者となった経験をもとに、地域社会のバリアフリーの状況を調査し自分が欲しいと思う形で情報発信しています。このブログではこれまでの調査研究や自分の経験から、都市基盤や建物などの活動障壁について、移動弱者と工学技術者との視点から問題提起します。

(2) 私は車イス使用者の代表ではありません
 車イス使用者は傷病の別、症状の軽重、年齢の高低、性別、趣味嗜好や生活の背景などが異なる人々がおり、私はそんな多様な身体能力や属性を持つ多くの障害者の一人です。つまり、私と異なる属性や能力障害の人々とは活動障壁による影響や対応策が異なるので、他の人の困難は理解していないものが多々あります。したがって、ここで紹介する内容はあくまでも私個人の経験や意見に基づく内容にすぎません。ただ、地域社会にある活動障壁の状況や対応策の必要性についてわからない部分があるとしても、社会インフラの企画、設計や施工をになう健常な人々より問題意識が確かです。また、法令に基づくバリアフリー・マニュアル等で提案される仕様が、私がストレスなく使える活動環境とおおむね一致します。そこで、このブログでは地域活動する障害者としての問題意識を、工学者としての視点から紹介します。それは一人の車イス使用者としての限界を越えるものでなく、車イス使用者全体の意見を代表するものでもありません。

(3) 私は医学、福祉、建築、福祉器具の専門知識がありません
 私が教育を受け職業で培った専門分野は土木工学であり、受傷後は20年以上独学し実践したのがユニバーサルデザインです。つまり、車イス使用者の機能障害や能力障害にかかわる医学的な知識を体系的に学んだことがありません。また、地域社会での活動や参加に関わる福祉についても同様です。建築技術は土木工学の延長で推測できることがありますが、福祉装具などリハビリ工学はわかりません。ただし、それら専門分野が共同して作り出すサービスの利用者として、複合的な視点と工学的な発想とにより個別分野の専門家と異なる問題意識や分析ができることがあります。ただし、よって立つ知識はリハビリで入院中や退院後に学んだ耳学問や自らがいろんな施設や場所を訪れ感じたことどもであることも事実です。したがって、たまたま出くわした特殊事例を一般化したり、思いがおよばずに短絡的に決めつける内容も含まれます。本ブログの内容はそんな限界を抱えることをご理解ください。

目次に戻る

     障害の部位と機能障害

 私は脊髄損傷により車イスを使う生活を送りますが、歩けない以外にも問題を抱えており、日常生活に影響する主なものを軽く紹介します。そんな問題は健常者の目に触れにくく、また見えないように処理するものがあります。そんな脊髄損傷に伴う困難について拙文にてくどくど伝えるよりも、適切かつ爽やかに紹介するユーチューバーを見つけたので【参考】にて補足します。

【参考】
現代のもののけ姫Macoさま:脊髄損傷は歩けないだけじゃない

suisui-Projectさま:排泄障害の実態と再生医療の役割【脊髄損傷】

(1) 第一腰椎の損傷に伴う下肢の著しい麻痺と移動法
 私の損傷部位は第一腰椎(L1)、大雑把に言えばへそ付近です。脊髄は脳と身体の各部をつなぎ脳からの指令や末端からの感覚を伝える神経が通り、上から頸椎、胸椎、腰椎、仙椎と続きます。L1の損傷に伴い私の脳からの指令はへそより下に伝わらず、また下の部位に生じた感覚が脳に届きません。その結果、二足歩行ができず、下半身の感覚が異常で、通常の排泄ができないほかの能力障害が起きます。他方、上肢は手や指を含め機能麻痺がありません。医学的には腹筋と背筋とは機能麻痺がない由ですが、日々車イスや寝台で過ごす関係でそれらの筋肉を使う機会が少なく、受傷以前に比べ著しく体幹バランスの機能が落ちました。ただ、不全麻痺であることからわずかながら脳からの指令が下肢に伝わり、大腿部の一部の筋肉を意識的に緊張や弛緩をさせられます。そこで、膝から下に短下肢装具を付け、ロフストランド・クラッチを両腕につけると、平坦で硬い床であれば数10m移動できます。

(2) 排尿障害、尿意の喪失と自己導尿
 私はL1部分に損傷があるので尿意や便意が脳に届かず、また排尿や排便の指令が膀胱や直腸に届きません。尿が膀胱一杯にたまったら下腹部にかすかに圧迫感がある程度の感覚しかなく、ある程度たまると身体の前屈、腹筋の緊張や咳などで尿もれが起こるのでパッドを常用します。排尿は自己導尿という方法、尿道経由で膀胱にくだを挿し入れ、自然に流れ出るのを待つ方法をとります。この排尿方法や排尿後の器具の洗浄を他者の目の届かない空間で行うため、障害者用の広い便房が要ります。これは私の排尿方法であって、車イス使用者には時や場合により異なる方法をとる人がいるようです。

【参考】
現代のもののけ姫Macoさま:これが排泄障害の実態
同上:自己導尿の方法を教えちゃいます
suisui-Projectさま:ケイソンの悩み?排尿管理編
同上:飲み会での排尿管理

(3) 下半身の感覚麻痺と褥瘡
 健常者の方々は長時間座位を続ければ尻ほかの部位に違和感を覚え、無意識のうちに足を組み直したり、座り直したりを繰り返します。しかし、私は臀部や下肢の感覚が脳に伝わらないので、同じ姿勢を続けても痛みや違和感などを覚えません。ただ、同じ姿勢で座り続けると坐骨が尻の特定部位を圧迫し続け、その部分の血流の悪化により皮膚がただれたり壊死したりし、損傷が皮下組織まで及ぶこともあります。これは床ずれないし褥瘡と呼ばれる傷です。それは通常の切り傷やすり傷と違い養生しただけでは容易に回復せず、入院手術しなければ治らないことがあります。私は在職中に褥瘡で手術と1月前後の入院を2度経験しましたので、今も褥瘡への恐怖に怯えながら行動します。予防策として車イスに高性能のクッションを敷くとともに、座る姿勢の変更を意識的に繰り返すよりありませんが、何かに集中すると除圧を忘れることがあるのが恐怖です。

【参考】
現代のもののけ姫Macoさま:死にもつ繋がる深刻な褥瘡問題
同上:自己導尿の方法を教えちゃいます
suisui-Projectさま:褥瘡(じょくそう)?まあ厄介ですわ。

 (4) 車イスユーチューバー
 上の参考で紹介したお二方が多面的に情報発信しており、何か知りたいことがあればかなりのことがわかると思います。お二人のユーチューブのホームアドレスを紹介します。

【参考】

 現代のもののけ姫Macoさま:ホーム
 suisui-Projectさま:ホーム

目次に戻る

    残された機能とできること、できないこと

(1) 立位の移動を使う場面
 このブログで立位での移動を「歩く」と表現しないのには理由があり、一つにはあまりに不安定で、手にものを持てないし、安全に立ち座りできる場所の間の移動しかできないからです。また、理学療法士から常に両杖と両足との3点以上で支えながら進むので、「高這い」が適切な表現だと指摘されたからでもあります。移動できるのが水平で硬い床に限られ、距離が最盛期ですら数十mでした。立位を続けられるのが移動なしでも数分だけなので、実生活で杖で移動できる活動はきわめて限定的です。そこで、地域社会での移動には用をなしませんでしたが、自宅での行動で重要な役割を果ました。
 退院直後は自家用車と居住フロアとの間に、玄関ポーチに100㎝、上がり框に30㎝および2階へ300㎝の段差があり、この段差の移動に両手すりと杖を組み合わせました。1階の食堂に安全に立ち座りできる場所を作ることで、車イスの使用を2階の居室と自動車での移動先とだけにできました。このわずかばかりの移動が自立したことと、自家用車に手動運転装置を装備したことにより独りでの外出が可能になりました。つまり、実用性がほとんど考えられない高這いが、私の行動力の基盤を支え続けています。

(2) 自家用車改造の運転
 私は両下肢に麻痺があるので市販の自動車はそのままでは運転できませんので、オートマチック車を手動で運転できるよう改造しました。これが在宅に戻ってのちの私の行動の自立の原点でした。改造車の詳細や運転法その他については別のブログにて紹介します。これにより通勤の自立に目処が立ったことで、職場復帰への足がかりになりました。また、本ブログで紹介する調査の実施や、神戸市ほかへの遠征の出張も可能になりました。

(3) 水分摂取と排尿管理
 尿意がないことは尿もれや尿路感染をまねくので、日常生活でも外出時でも大きな懸念事項です。日常生活では排尿のインターバルを3時間程度を目安とし、日々のルーティンに組み込みます。外出時も同様に3時間の排尿を前提とし、障害者用トイレのある場所をクリティカルポイントとする行程を組みます。さらに外出日には水分の摂取を控え、かつ利尿作用のある飲料を摂取せぬよう注意を払います。水分の摂取を控える理由は膀胱に溜まる尿の量を抑えるためですが、そんな折に尿路感染にかかることが多いように振り返ります。尿が汚れた折には水を多量にのみ、排尿量を増やすのが一定の効果あがあることの裏返しです。排尿のインターバルや日々の行動への組み込み方法は、退院後に失敗を繰り返しながら自分なりに決めた管理法であり、これが適切であるか否かはまったくわかりません。

(4) 加齢による衰え
 前期高齢者の仲間入りした2年前頃から下肢麻痺伴う問題ばかりでなく、身体の不調が繰り返し起こります。その度に問題の回復のために身体を休めるなどの対応をしますが、問題が除けたときには脚力や体幹に著しい衰えが残ります。その度に自前でリハビリをするも筋力が以前の水準に戻らず、できないことがだんだんと増えるこの頃です。具体例をあげれば杖で安定的に移動できる距離が短縮し、両手すりで上り下りできる階段の数が減るなどです。以前は居住フロアと自家用車との間を杖で往復できましたが、この頃は車イスで玄関ポーチまで出、自家用車の運転席まで5mほどを手すりに頼る移動です。そんな移動さえもできなくなれば自動的に引きこもり障害者になります。このブログでは現地調査に基づく情報を発信していますが、それができなくなる時期が近いことを感じます。

目次に戻る 

前ページに戻る
情報提供:NPO 環境福祉支援サービス プラスアルファ
<企画・調査・製作:環境複合研究所>